1999年11月僕の手に停まった本

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1日朝倉書店『高エネルギー物理学の発展』長島順清 まるで分からんが現象論は面白そうだなあ、非摂動効果も面白そうだなあ、といったところ。
4日東京大学出版会『演算子法 - 一つの超函数論』吉田耕作 UP応用数学選書の5。Mikusinski の演算子法については一変数定数係数線形非斉次微分方程式が解けるということしか知らなんだが(「しらへんかった」は純粋な関西弁ではないとか、余談でした)第一種Bessel 函数とかも扱えるんだと。ふーん。でも級数展開を経由せずに出てこないので不満足。Bessel の微分方程式を満たすことを直接示せないか?
あまりBessel の微分方程式自身には関係ないような。Jn-1-Jn+1=2d/dt Jn を示しているのだが…(Nov, 6)
4日岩波『群論』寺田・原田 現代数学の基礎の14。有限群の(複素数上の)表現論は群環が半単純であることに尽きる、というのでGalois 理論とあわせて多元環の威力を感じる今日この頃。物理を志していながら物理の本の添え字ばりばりは嫌いで、かと言って実数体、複素数体以外の一般の体になると読む気がしない私はどうすればいいのでしょう。
5日D『The Quest fot Understanding in Relativistic Quantum Physics』D. Buchholz and R. Haag 『Local Quantum Physics』の内容の概観に加えてlocal gauge principle とrenormalization group のalgebraic qft における扱いの概観。実験的に確立されたStandard Model とその数学とはまだ言えない計算方法から引き出せるものがまだまだあるということ。
6日岩波『無限次元Lie 環』脇本実 場の量子論においてvon Neumann に始まる因子環が重要だそうだしこちらの無限次元Lie 環も重要だそうだ、ではその2つの関係は何なんでしょう。しかしsimple Lie superalgebra に対する Donchan 図形というのは造語でしょう…
7日日本評論社『数学オリンピック1993-1998』数学オリンピック財団 今年度版が出たので余ったのをくだすった。でも僕こんなの見ないからね、欲しい人は差し上げます。
7日hyperion『Scriabin the complete piano Sonatas』Marc-Andre Hamelin 臨時収入があったので江戸っ子らしく浪費してみた。アムランのCDだが、変なのを買おうと思ったのに聞いてみたら案外まともだった。
8日岩波『ノストラダムス予言集』高田・伊藤 いわゆる『諸世紀』の原語 centuries はフランス語では当時から既に「世紀」という意味を失っていたそうな。確かに、今は20esiècle と言うわなあ。
11日D『What good are the QFT Infinities?』R. Jakiw Anomaly の発見者の一人Jackiw 先生の論説。無限大と無限大の差に意味がある、と強調する。そこで紐は有限なのなら、この無限大と無限大の差から現れる物理的事象をどのように説明するのか? と問うている。
12日岩波『ホロノミック量子場』神保道夫 展開の4。頑張れば読めそうである。この本で触れられているRiemann-Hibert 問題はConnes が hep-th/99090126 でmention しているものと同じか?
12日D『Gauge Theory and Renormalization』G. 't Hooft 繰りこみ理論の発展の歴史的個人的記述。
12日D『Topological Aspects of QCD』G. 't Hooft Higgs mechanism と confinement は同じことなんだと。最近になって instanton を勉強せんといかん雰囲気が感じられるようになってきた。
15日岩波『リーマン面』H. ワイル松尾先生おすすめ。取り敢えず1章の概要をまとめてみた。伊藤さんに「なぜRiemann-Roch を拡張するとindex theorem になるのですか?」と聞くと「それはあまり自明ではない」とのこと。
概要に2章を加えた。さてゆっくり読むか。(16日)
15日裳華房『演算子法(下)』ミクシンスキー コンパクト群上の函数に拡張できるかな。そんなことやって意味あるのかは知らぬが。
15日D『Stochastic Energetics』関本謙 一粒子程度の小自由度系でも確率的なゆらぎをいれるとエントロピー等を定義できること(と私は理解した)。小林君に連れられて駒場の基礎科の関本先生の集中講義にもぐったときに聞いたアドレス。
17日岩波『怠け数学者の記』小平邦彦 物理科の助教授だったこと、(おそらくワイルに影響されて)「メトセラへ帰れ」を読んでいたことなど。
18日岩波『困ります、ファインマンさん』RPF この本の英語の題はWhat do you care, what other people think? というわけで、見習いたいと思っている。
18日培風館『ある古典物理学者の夜想』R. マコーマック 一次大戦当時のひとりの老いたドイツの古典物理学者の回想、という形を取った史実に基づいた小説。読むに値すると思う。読んでも面白い。ドイツの状況がどうであったか。
19日元代数学者『収穫とまいた種と- 数学者の孤独な冒険』A. Grothendieck 何が書きたいのかよくわからん。被害妄想か?
22日Cambridge『Joe's Big Book of String』J. Polchinski うう、大枚はたいて買ってしまった…まだ読める状態ではないのに… 序文にあるHomePageのaddress が間違っているのに注意!
24日東方書店『中国古文字と殷周文化』東方書店編 十干は太陽が10個でてくる神話のそれぞれの太陽に対応していて且つ殷王家は十干を名前に持つ10の氏族に分かれておったそうな。ははあ。
26日現代数学社『古典型単純リー群』横田一郎 一般論に頼らず具体的に確かめんとする。関係無いけれど実数上有限次元の絶対値つき(斜)体があるとそれ上のユニタリ群を考えてちょっといじると単純群が出来ることが証明できて、Lie 群の分類を引用して4元数よりでかい斜体がないことがしめせるんじゃなかろうか、という妄想。
18日D『The INTERCAL Programming Language Revised Reference Manual』Woods,Lyon,Howell,Raymond 君は知っているか?日本語訳してプロジェクト杉田玄白に寄与したいぐらいamerican joke に満ち満ちた言語である。参考になるホームページ:フリーなコンパイラ・インタープリタカタログおよびレトロコンピューティング博物館(27日追記)
19日立読森北『未知なる宇宙物質を求めて』G. 't Hooft 真中あたりのゲージ理論の繰り込みからダイナミクスにかけては流石開拓者とてもためになるし面白い。後半の超重力・紐に関しては多少否定的か。「歴史は繰り返すが、予言できるようには繰り返さない」(本文最終ページ脚注より。)
19日裳華房『有限置換群』大山 基礎数学選書の26。Snの外部自己同型の決定だが、まず互換が互換に移るなら内部であることを示し、そうでないから互換は重ならない互換の何個かの積に移っている、それぞれの中心化群の位数を初等整数論的に処理して n=6 以外はありえない、というものが載っていた。 n=6 の場合の多少意味ある構成も載っていたが、あまり納得せぬ。
19日河合文化研究所『超準解析とファインマン経路積分』中村徹 Feynman-Hibbs の問題2.6を厳密化しただけで、それ以上では無いように思える。

Written by 立川裕二。ご意見は こちらへ。