1999年9月僕の手に停まった本

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1日Dover『Regular Polytopes』H.S.M. Coxeter Coxeter-Dynkin 図形はLie 代数をやっていると出てくるのだが一般次元のせい多面体の分類にも出てくると聞いたので買ってみる。まあ、簡単なことではあるのだが。いづれまとめてTeXに打つでしょう。
1日DTony Smith's PageTony Smith 数秘術にすぎぬ。どうも世の中にこういう数秘術をやっている人が多いのだが、これらは既に得られた物理的結果を解釈しているのみで、何も新たな結果を生み出さないから困るのである。実際彼のページの一部ではヘブライ文字の字母やトーラーをも数学と関係づけているが、彼の物理に対する態度は彼のトーラーに対するものと同じなのである i.e. 新たな物理は生み出しようがない。では、超ひも理論家のやっていることは具体的にどのようにちがうのか…
2日Benjamin / Cummings『Quantum Electrodynamics』R.P. Feynman とっても標準的。いろいろ示唆に富むのはいつものとおりである。Pauli 方程式もやはりラプラシアンの平方根をとることで得られると書いてあった。これは初耳だ。
2日東大数理科『経路積分とその応用』中原幹夫 数理科学セミナリーノートの15。sinh の無限積展開が調和振動子を考えると得られる、とあるが、さてたとえば水素原子とかに同じ方法を適用しようとすると案外大変だ。

6日追記。本屋でSpringer のTracts の一冊で調べたところ球座標で経路積分するとBessel 関数なるものが得られるらしいが、それの無限積展開は得られるや否や? 指数定理に興味の沸かぬ、経路積分により惹かれるひとはあの青い本を勉強してください。ζ正規化の正当化も載っているようですし。

3日McGrow Hill『Complex Analysis』V. Ahlfors ζ の解析接続の復習をせねばならぬ。
6日D『High-Energy Tests of Lorentz Invariance』S. Coleman, S.L. GlashowLorentz 不変でない項(を基本のLagrangian に足す場合)は現在どの程度実験で制限されているか、というもの。
6日D『Radiatively induced Lorentz and CPT violation in electrodynamics』R. Jackiw, V.A. Kostelecky量子補正によって生ずる項の大きさに決めがたいものもあるというもの。
6日D『When radiative corrections finite but undetermined』R. Jackiwすぐ上のものの補強+平明化。量子補正によって生ずる項が保存則および繰りこみ可能性をやぶる場合はそれは計算できるが、破らない場合は難しいというもの。Peskin&Schroeder の記述も信頼ならんぜ、という指摘はanomaly の発見者の一人Jackiw 先生ならではかなあ。
6日D『Is the axial anomaly really determined in a continuous non-perturbative regularization?』J.L. Jacquot繰りこみ可能性を破る場合でも計算結果は一意に定まらないぜ、というもの。以上e-print archive をぶらぶらしていて見つけた堅実な論文たちを眺めてみました。しかしe-print archive ではStandard Model 関係の論文はphenomenology (現象論)としてまとめられていてtheoretical と名のつくものは大抵現在のところ実験的検証のほぼ不可能な超ひも関係なのはなんだか変だ。
7日D『Superselection Sectors』FredenhagenBorcherds のVertex Algebra の論文で他の場の量子論の定式化との比較がしてあったのだが、そこでHaag 先生系列のものと比較されていなかったのは何故だろう。
7日岩波『統計力学の数理』荒木不二洋 必死に不等式評価をする、というのは物理的に意味があるのかしら。
7日岩波『ソリトンの数理』三輪・神保・伊達 KdV equation はboson fermion 対応で自然に現れるとのこと。
8日岩波『非可換幾何学入門』Alain Connes 萩原さんに「買っても分からないですよお」というと「買わなきゃ読まないじゃないですかあ」と言われたので買ったが、von Neumann 代数を知らないと何も読めないようだ。フランス語版の訳であって英語版とは前々違うらし。
9日D『On the Hopf algebra structure of perturbative quantum field theories』D. Kreimer BPHZ くりこみ操作はHopf algebra の構造を持つとのこと。繰りこみ可能性の証明の簡略化以外に物理的意義があるかどうか。
12日D『Monstrous Moonshine and the Classification of CFT』T. Gannon 数セミの解説記事みたいな感じのinformal なノート。joke がちりばめられていた。興奮が伝わってくる。興味のあるひとは読んでみると勉強する気になるのではないか。
13日中公文庫『ショスタコーヴィチの証言』S. ヴォルコフ編 ソ連がいかにひどい国であったかが分かる。(21日深夜)
13日Cambridge University Press『The Quantum Theory of Fields vol. I』S. Weinberg なぜ一通り英文のところを流し読みするだけで1週間かかってしまうのだろう。そのせいで一週間HomePage を更新できなかった。(21日深夜)
13日遊星社『数理物理への誘い』江沢洋編 学習院で毎年ひらかれているセミナーの記録。図書館でセミナー時に実際配布される講究禄を借りたほうが詳しい。まだほとんど読んでいない。(21日深夜)
13日遊星社『数理物理への誘い2』荒木不二洋編 同上。(21日深夜)
16日Mc-Grow Hill『Relativistic Quantum Fields』Bjorken, Drell 西田に言われて借りてみる。がまだ読んでいない。
20日D『Renormalization in QFT and the Rieman-Hilbert problem』A. Connes et D. Kreimer Dimensional regularization には数学的意味がある、と主張していることはわかった。物理的意義やいかに?
22日吉岡『場の量子論3』S. ワインバーグ なぜ日本語版のほうが英語版より安いのだろう。多少ショック。
22日新潮『雄気堂々(下)』城山三郎 こんなもの奨学生によませる理事長も理事長だ。上巻がない。
22日Dhep-ex/9909031 誤差をともなった行列の逆行列の誤差を評価する、というもの。いまどきこういうのが論文になるんだから不思議なものである。
22日Dphysics/9909042 Schroedinger 方程式のsimulation. 見て面白い。直接のリンクはhttp://nacphy.physics.orst.edu/ComPhys/PACKETS/。A must. でもめちゃめちゃ重い。
23日学習院『予稿集』数理科学'99 に参加した。非常に面白かった。江沢先生はじめ主催者がわの みなさんがもっとも頻繁に講師に質問を浴びせていたのが印象的であった。
24日『熱力学入門』田崎晴明 そのとき田崎先生が配っていたもの。ありがたく頂戴する。熱力学を論理的に展開してある。
27日D『ゲージ理論の数理と物理』深谷賢治
27日D『(Gauge) String Field Theory』九後汰一郎
27日D『Advanced Quantum Field Theory』Edward Teo Yet Another Text for QFT。何でもXに紹介されていた。
27日新潮『雄気堂々(上)』城山三郎 なかなか面白かった。渋沢栄一の同郷の知り合いが沢山活躍しているのは不思議なものである。
28日D『Non-planar massless two-loop Feynman diagrams with four on-shell legs』J.B. Tausk 4外線 2 loop でもっともややこしいFeynman Diagram を解析的に計算した「だけ」。これまでは数値的になされていただけらしい。うーん。
28日D『QED effective action at finite temperature』H. Gies 全然よんでない。電子の質量より十分ひくい有限温度でのQEDというのはおもしろそうだ。電子が0.5MeV で1MeV=1.2 かける1010Kで太陽表面でも105Kくらいだから「十分ひくい」といってもめちゃめちゃ高温。黒体放射をみれば実験とくらべられるんだろう。があまりそういうコメントは無いようだ。
28日D『QED Effective Action at Finite Temperature: Two-Loop Dominance』H. Gies 上のつづき。
30日D『Physically plausible Lagrangian-based regularization of QED』M. Ribaric et L.Sustersic 意義不明。
30日D『Framework for a theory that underlies the standard model』M. Ribaric et L.Sustersic 上に参照されている彼らの前の論文、だがEPRの彼らの理解は完全に間違っている! 箱の中に黒と白のボールが入っていて二人がそれを見ないで取り出して袋に入れてspace-like に離れたところで袋をあけて見る、すると片方が黒を見たならもう片方が白を見るわけだが、これが光速を超えた伝播だとだれが考えるだろうか。そうすればEPRの本質がどこにあるかもっとよく分かるだろう。EPRやBellの不等式は相対論とは一切関係ないのである。文句はまだまだある。
30日D『Riemann Hypothesis』Chengyan Liu リーマン予想が解けたらしい?と伊藤さんに教えてもらった。著者のメールアドレスがgeismn@bigfoot.com なのは怪しい。伊藤さん曰く黒山人重さんみたいにjoke で書いたのでは。それにしては変な論文だ。以上のようにe-print archive にはまともでないものもいくらでもあるので注意しよう。

Written by 立川裕二。ご意見は こちらへ。